耳の不調、感じていますか?

加齢性難聴とは

年齢とともに、耳の聞こえの不調を感じてくる方も増えてきます。加齢以外に特別な原因がないものを「加齢性難聴」と呼びます。

加齢性難聴は、

◇バランス能力が悪くなり、歩行機能の低下や転倒を引き起こす

◇他者との会話に加わりづらくなり、社会的孤立状態を招く

◇環境音(車のクラクションなど)や緊急時の警報が聞こえない

などの多くの問題を引き起こすだけでなく、社会的・認知的刺激の低下から認知症のリスクを高めることも知られています。

加齢性難聴に早く気づくために

加齢性難聴は、本人だけでなく周囲の人が聞こえの異常に気づくことも重要です。

下記の項目に当てはまる場合は難聴の可能性があるため、まずは医療機関で聴力検査を受けて自分がどの程度聞こえているかを確認しましょう。

 

<加齢性難聴チェックリスト>

◎テレビの音量が大きい

◎話す声が大きくなった

◎耳鳴りがする

◎電子機器、家電の音に気づかない

◎外に出なくなり、ひきこもりがちになった

◎聞き返すことが多くなった

◎ものを置き忘れることが多くなった
(認知症のおそれとともに、難聴も生じている可能性がある)

認知症と難聴

難聴になると、音の刺激や脳に伝えられる情報量が減少したり、会話がスムーズに出来なくなるために他人との接触を避けるようになったりします。
さまざまな音の情報が届くこと自体が、脳の機能にとって重要ですが、その情報量が減ることによって脳の老化を招いてしまいます。

2017年7月、国際アルツハイマー病会議において、難聴は高血圧・肥満・糖尿病などとともに認知症の危険因子の一つに挙げられました。さらに、2020年には「予防可能な12のリスク因子の中で、難聴は認知症の最も大きなリスク因子である」と報告され、難聴と認知症の関係が注目されています。

難聴と認知症の関連メカニズムについては様々な仮説がありますが、難聴により知覚入力が減少することによって認知機能の低下につながるのではないかと考えられています。

しかし難聴になるとすぐに認知症になるわけではありません。
聞こえを補って「良い聞こえ」を維持すれば脳が活性化して認知症を防いだり発症を遅らせることが出来ます。

近年は、難聴が脳機能と関連することに着目し、脳の活性化を促すために早くから補聴器を使う時代になってきています。

少しでも聞き取りづらさを感じるようになったら、一度専門医に相談するとよいでしょう。

耳にやさしい生活を

加齢性難聴の直接的な原因は加齢ですが、進行や悪化にはその他の要因が絡んでいることがあります。

普段の生活のなかでその要因をできるだけ取り除くことが、将来の加齢性難聴の予防や進行を遅らせることに繋がります。

聞こえづらいからといって大きな音を長時間聞いていると、耳の奥にある『有毛細胞』が壊れてしまう恐れがあります。

『有毛細胞』とは音の刺激を神経の電気信号に変換し、脳に伝える役割を担っています。

有毛細胞は一度壊れてしまうと再生しないため、注意が必要です。

イヤホンを使うとついつい音量が大きくなりがちです。さらに、長時間の使用は有毛細胞にダメージを与えてしまいます。

可能な限りイヤホンを使わないか、長時間の使用は避けましょう。

耳の血液の循環が悪くなると、聴覚器官や脳への神経伝達が十分に行われなくなってしまいます。血液の流れを良くすることが、難聴の進行を遅らせることにつながります。

また、高血圧や高コレステロール血症、糖尿病などの生活習慣病や喫煙は内耳の血流を悪くさせ、難聴の進行につながります。

塩分や脂質を控えた食事、適度な運動、規則正しい睡眠を心がけましょう。

過度なストレスは、難聴の原因となる場合もあります。

趣味に没頭する時間を作ったり、気分転換をしたりすることでストレスを発散しましょう。

また、適度な運動もストレス発散となります。1日30分程度のウォーキングや体操など、取り組みやすいことから始めましょう。

ただし、無理をすると精神的にも肉体的にも負担になってしまいます。無理なく長期的に続けられる運動を取り入れると良いでしょう。

<関連リンク>

Hear well Enjoy life.- 快聴で人生を楽しく –(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)