「フレイル」にならないために

「フレイル」とは?

フレイルとは『病気ではないけれど、年齢とともに、心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい、健康と要介護の間の虚弱な状態』のことを指します。

2014年に日本老年医学会が提唱した概念で、英語の「Frailty(フレイルティ:虚弱)」が語源となっています。

フレイルは要介護状態の前段階と考えられていますが、一方で「可逆性」という特性があり、自分の状態と向き合い、予防に取り組むことでその進行を緩やかにし、健康に過ごせていた状態に戻せる可能性があります。

フレイルの要因と「フレイルサイクル」

フレイルは大きく4つの要素に分かれており、これらのフレイルは連鎖していくことで進行していきます。

 

 

①低栄養・体重減少

高齢者になると1回の食事量が少なくなるため、栄養素が不足します。さらに歯の喪失や噛む能力の低下など、口腔機能の低下(オーラルフレイル)からも低栄養が引き起こされます。

 

 

②サルコペニア(筋肉量の減少)

慢性的な低栄養状態が続くと、筋肉量の減少(サルコペニア)や筋力低下が進みます。

さらに、下肢(脚部)の筋肉が減ることで歩く速度が遅くなる・階段の上り下りがつらい・つまづきやすくなる…などの運動器障害(ロコモティブシンドローム)も進んでいきます。

 

 

③基礎代謝の低下、活動量・エネルギー消費量の低下

筋力量・運動量の減少によって基礎代謝が下がると、疲れやすくなったり活力が低下してしまい、日常生活での活動量がさらに減っていきます。

ここに認知機能の低下など精神面の低下も加わると、外に出るのが億劫になる・人との交流を避けるようになる…など日常の生活にも支障をきたすようになります。

 

④食事量の減少・食欲の低下

活動量が減ることによってますます食欲が低下し、食事量が減少していきます。

すると、低栄養が更に悪化するという負の循環に陥ります。

 

 

このように、フレイルの要因が重なり、悪循環に陥った状態のことを「フレイルサイクル」と言います。

フレイルサイクルを断ち切って健康を回復するためには、いち早くフレイルに気づき、対策を進めることが重要になります。

フレイルにならないために

フレイルを予防するには適度な「運動」と「栄養バランス」の取れた食生活、そして「社会活動への参加」が重要となります。

加齢とともに胃腸機能が衰え、食事量や食欲が低下して慢性的に低栄養の状態となると、サルコペニアが進行し、フレイルに陥り、やがては要介護へ…という悪循環をたどります。欠食をせず、バランスのよい食事を心がけること、そして、筋肉のもととなるタンパク質を十分に摂取することがポイントです。

65歳以上の方の筋肉維持には、1日に少なくとも体重1kgあたり1g以上(体重60kgの方は60g以上)のタンパク質を摂ることが望ましいと言われています。

運動は筋肉量の減少や筋力低下を防ぐだけではなく、体力が落ちて疲れが抜けないことや食欲が減って体重が減少することを予防し改善するのにも効果的です。

また運動を行うことで、気分転換やストレス発散となり、精神的な安定を促すこともできます。

さらに、運動と同じくらい大切なのは、日常生活の中で体を動かすことです。意識して体を動かすことがフレイル予防につながります。

・近所には徒歩で移動する

・歩くときは、できるだけ広い歩幅で、意識して少し早めに歩く

・掃除や洗濯、料理などの家事を積極的に行う

・地域のイベント等に参加する

・家族や友人と外出する  など

 

趣味のサークル活動、町内会やボランティア活動など、積極的に地域社会にかかわる活動がフレイル予防に効果的です。社会の一員としての居場所があること、そこで生まれる人との交流は、とてもよい刺激となり、心身の健康に大きな役割を果たします。

<関連リンク>

そのカギを握るのはフレイル予防だ(厚生労働省ホームページ)

フレイル予防応援サイト