12月から年末年始にかけては、クリスマスや忘年会・新年会などお酒を飲む機会が増えるシーズンです。
適量のお酒はリラックス効果やストレスの緩和・人間関係の促進などの社会的効用のほか、動脈硬化を予防するHDLコレステロールの増加・血行促進・胃酸分泌促進などの医学的効用が得られると言われていますが、慢性的な飲みすぎは健康リスクを高める原因となります。
アルコールのリスクや影響を正しく理解し、これからのお酒との健康的な付き合い方について考えてみましょう。
アルコールが体に与える影響
アルコールは、少量であっても健康リスクを高めると言われています。
厚生労働省が作成した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、研究結果に基づく疾病毎の発症リスクが上がる飲酒量(純アルコール量)について説明しています。

図の数字は飲酒量(純アルコール量)を指しており、男性・女性ともにこれ以上の飲酒をすると疾患を発症するリスクが上がると考えられるものです。
ガイドラインでは、脳梗塞では男性が週300g以上・女性では週75g以上の飲酒で発症のリスクが上がるのに対し、高血圧では男女ともに少量でも発症のリスクが上がるとされています。
それ以外にも、飲酒は生活習慣病をはじめとする様々な身体疾患やうつ病等の健康障害のリスク要因となっており、厚生労働省が掲げる「健康日本21(第三次)」において、①生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の減少、②20歳未満の者の飲酒をなくす、③妊娠中の飲酒をなくす、という三つの目標を定め、飲酒に関する正しい知識の普及啓発や、未成年者の飲酒防止対策等に取り組んでいます。
「純アルコール量」とは、お酒に含まれるアルコールのみの量をグラム数で表したものです。純アルコール量は単に飲んだお酒の量や度数に関わらず、体内に実際に摂取されるアルコールの量を正確に把握することができます。
<純アルコール量の計算式>
飲むお酒の量【 】ml ×
アルコール濃度【 】(%)÷ 100 ×0.8(アルコールの比重)
=純アルコール量【 】g
この計算式に当てはめると、アルコール濃度5%のビールを500ml飲んだ場合、体内に摂取される純アルコール量は20gと計算することができます。
厚生労働省は、「節度ある適度な飲酒」として、1日の平均純アルコール量の目安を健康な男性で約20g程度としています。また、女性や高齢者は体への影響が大きいため10g程度が推奨されています。
多量飲酒による健康障害
体内に入ったアルコールの大部分は肝臓で代謝されるため、肝臓は過度の飲酒によって最も障害を受けやすい臓器と言われています。
アルコール性肝障害では、長期間の過剰な飲酒によって肝臓が炎症を起こし、脂肪の蓄積や線維化が起こります。
初期の脂肪肝から始まり、そのまま過度の飲酒を続けた場合、肝硬変・肝がんなど命に関わる疾患に進行する恐れがあります。
アルコール性肝障害と診断された場合、回復するまで完全に断酒することが強く推奨されています。
高血圧は少量の飲酒でも発症リスクが高まる疾患として位置づけられています。
長期間かつ習慣的な飲酒は、交感神経の活性化させたり、血圧調節ホルモンのバランスに影響を与えるため、血圧の上昇につながります。
お酒を飲んだ直後は血圧が下がりますが、これはアルコールが分解される過程で一時的に起こるもので、その後血圧は上昇に転じることがわかっています。
また、お酒と併せて塩分の多いおつまみを摂ることにより、さらに高血圧を招く原因にもなります。
過度の飲酒は、交感神経を活性化させてしまいます。それにより、心拍数増加や血圧上昇を引き起こし、虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)、不整脈、心房細動などを誘発すると報告されています。
さらに、1日平均で3合以上お酒を飲む人は、脳梗塞のリスクが1.35倍、脳出血では1.82倍になるとの研究結果もあります。
お酒を飲みすぎた翌日に動悸・息切れ・めまいなどの症状が現れた場合は、不整脈が原因となっている可能性もあるため、注意が必要です。
「寝酒」を習慣としていませんか?
就寝前の飲酒は一時的には入眠を促すものの、睡眠の途中からアルコールが分解される過程で交感神経が活性化されるため、中途覚醒が増加します。
また、アルコールの利尿作用によってさらに睡眠が中断されるなど、全体的に睡眠の質が低下し、日中の眠気を悪化させたり、閉塞性睡眠時無呼吸の発症や症状悪化の原因にもなります。
さらに、就寝前の飲酒は耐性がつきやすく、効果を求めるために摂取量が増えていく傾向があります。
『アルコール性認知症』とは、アルコールの多量摂取により引き起こされる認知機能障害を指します。
アルコール性認知症の原因として、アルコールの長期的な過剰摂取による脳出血・脳梗塞などの脳血管障害、栄養吸収阻害による脳内のビタミンB1不足、頭部外傷、脳の萎縮などが挙げられます。
また、飲酒による肝硬変や糖尿病も認知症のリスクを高めることが分かっています。アルコール性認知症は若い世代でも発症する可能性があり、早期に禁酒すれば改善する見込みがあるという点も特徴的です。
アルコールの多量摂取とメタボリックシンドロームは密接に関係しています。
アルコールはそれ自体が1gあたり7kcalとカロリーが高く、食欲増進作用によって脂質の高いおつまみなどを余分に摂ってしまい、カロリー過多になりがちです。
また、アルコールを摂取すると肝臓はアルコールの分解を最優先するため、脂質や糖質の代謝は止まってしまいます。さらに、アルコールは肝臓での中性脂肪の合成を強く促進したり、脂肪酸の燃焼を抑えるため、中性脂肪が蓄積されやすくなり肥満や脂肪肝の原因となります。
健康的なお酒との付き合い方
厚生労働省が作成した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」では、健康に配慮した飲酒の仕方や避けるべき飲酒などについて、下記のように説明しています。
また、お酒の影響は体質・性別・年齢・体調などによっても異なります。
一人ひとりが自分に合った飲酒量や飲み方を把握し、健康や生活習慣病などの発症リスクに配慮した飲酒を心がけることが大切です。