塩分、摂りすぎていませんか?
人間の体には常に一定の割合で塩分が含まれており、体の状態を整えたり、神経や筋肉のはたらきを調整するなど、人間にとって欠かせない栄養素のひとつです。
しかし、塩分の摂りすぎは、さまざまな病気のリスクを高めることにもつながります。
厚生労働省では、毎年9月1日から9月30日までの1か月を「食生活改善普及運動」の期間と定めており、その中には「食塩摂取量の減少」にむけた取り組みも含まれています。
おいしく、健康的な食生活のためにも、減塩を意識しつつ、塩分を日々の食事に上手に摂り入れるコツをおぼえましょう。
塩分のはたらき
塩は人間の体の中で「ナトリウムイオン」と「塩化物イオン」に分かれて存在し、生きていく上で欠かせない大事な働きをしています。
①消化と吸収を助ける
胃酸の主な成分である「塩化物イオン」は消化を活発にしたり殺菌作用があります。
また「ナトリウムイオン」は小腸で栄養の吸収を助ける働きをしています。
また、塩分は消化酵素の働きを活性化します。
②細胞を正常に保つ
ナトリウムイオンは、細胞の周りを囲む細胞外液に多く含まれており、細胞外液の浸透圧を一定に保っています。
③食欲や味覚の正常化
塩味は、体の調子を整えるために必要なミネラルを示す味として本能的に好まれると考えられています。
塩分を気にするあまり、極端に味気ない食事を続けてしまうと、味覚が働かない状態になります。
適切な塩味は味覚を刺激し、食欲を増進させる働きを持っています。
④神経や筋肉の働きの調整
ナトリウムイオンは、人が手や足を動かす時に脳から出した命令を伝えやすくしたり、熱い・冷たいなどの刺激を神経細胞を通じて体内へ伝えます。
適切な塩分量とは
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(20年版)」では、1日当たりの摂取目標量を食塩相当量として「男性7.5g未満、女性6.5g未満」と設定しています。
また、高血圧で治療している人は、一日6g未満にすることがすすめられています。
日本人の1日の食塩摂取量の平均値は、男性11.1g、女性9.4g と、男女ともに10 年間で減少傾向にあるものの、目標量にはまだまだ差があります。
また、WHO(世界保健機関)では1日5g未満としています。
このWHOの基準は高血圧やガンとナトリウムの関連についての様々な研究から導かれており、欧米などの先進国では基準の一つとなっています。
食塩の取りすぎは高血圧をはじめとした生活習慣病に深く関わってきますので、日常よく食卓に並ぶ食品にも注意が必要です。
減塩食をはじめてみましょう
塩分の摂り過ぎが健康に良くないと分かっていても、濃い味付けに慣れている人にとっては、いざ減塩しようと思ってもなかなか実行に移せない場合が多いようです。
焦らず、少しずつ薄い味に慣れていくことでストレスなく減塩を続けることができます。
健康的な食生活を送るために、日常の生活に取り入れやすい味の濃い食べ物を見直すポイントを紹介します。
①調味料を工夫する
薬味(わさび・生姜・にんにく・しそ・みょうがなど)や香辛料(唐辛子・山椒・カレー粉など)、酸味(レモン・酢など)を効かせると香味や酸味がアクセントとなって薄味が気にならなくなります。
②食材の選び方を工夫する
食材の選びを工夫することも薄味の物足りなさをカバーする方法のひとつです。
根菜類などの歯ごたえのある食べ物は食べ応えがあり、満足度を高めます。
また、こんにゃくや海藻、きのこ類などを普段の食事にプラスすることによって食感が豊かになります。そのうえ、いも類、こんにゃく・海藻・きのこ類に豊富に含まれる食物繊維には、腸内で塩分(ナトリウム)を吸着し便と一緒に排泄する働きがあり、さらに減塩の効果を高めます。
③うまみを上手に活用する
昆布やかつお節のような出汁のうま味は、料理全体の味を引き上げ、薄味でも十分に美味しく感じることができます。
④味にメリハリのある献立にする
すべての料理を薄味にするより、しっかりした味付けの料理を1品+ごく薄味の料理2~3品にした方が満足感が得られ、全体の塩分量を抑えることができます。
⑤食事の際にも塩分を意識する
・塩やしょうゆ、ソースなどの調味料は、直接「かける」ではなく、小皿にとって「つける」
・麺類を食べる時はスープは残す
・佃煮や漬物、インスタント食品や加工食品は控える
・低塩・減塩の調味料を使う