健康のために大切な睡眠
毎年3月18日は「春の睡眠の日」です。
「春の睡眠の日」は、睡眠健康への意識を高めることを目的として、睡眠健康推進機構が制定しました。
睡眠は、1日中活動しつづけた脳や体を休養させるだけでなく「細胞の修復」「免疫機能の増加」「記憶の定着」「感情の整理」「成長ホルモンの分泌」など、たくさんの役割があります。
睡眠の時間や質が悪化すると、さまざまな疾患の発症リスクが増加し、寿命が短くなるリスクが高まることが指摘されています。
また、睡眠不足による眠気や疲労が原因で起こる事故やケガのリスクも高まります。
睡眠の質を向上させるためにも、生活習慣や睡眠環境などを見直してみましょう。
適切な睡眠時間と「睡眠休養感」
体質や年齢などによっても変わりますが、成人では適切な睡眠は6~9時間が目安といわれています。
また、睡眠で休養がとれている感覚(睡眠休養感)を向上させることも重要です。
いくら睡眠時間が足りていても『熟睡できた感じがしない』『疲れが取れていない』など、睡眠休養感が低下していると、健康状態の悪化に繋がります。
日本での追跡調査においても、睡眠休養感が心筋梗塞・狭心症・心不全などの心血管疾患の発症率と関連していることが示されています。
さらに、睡眠休養感の低下は肥満・糖尿病・脂質異常症のほか、抑うつの度合いが高まることなどにも繋がると言われています。
睡眠休養感は、睡眠による休養を通じた自身の健康度を反映する自覚的な指標の一つとなります。
睡眠に対する年代別の取り組み方
厚生労働省が公表している「健康づくりのための睡眠ガイド2023 」では、年代別に適切な睡眠時間を確保することを推奨し、質の高い睡眠のために心掛けるべき注意点を細かく示しています。
・個人差はあるが、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保する。
・食生活や運動などの生活習慣や寝室の睡眠環境を見直して、睡眠休養感を高める。
・睡眠の不調・睡眠休養感の低下がある場合は、生活習慣等の改善を図ることが重要であるが、病気が潜んでいる可能性にも留意する。
<⚠寝だめに注意>
平日の睡眠不足(睡眠負債)を、休日に「寝だめ」をして取り戻そうとする習慣がある人は少なくありませんが、実際には眠りを「ためる」ことはできません。また寝だめをしても、日中の眠気が完全に解消されることはありません。
さらに、寝だめのために休日の起床時刻が大きく遅れると、体内時計が混乱し、健康を損なう危険が生じてしまいます。
休日に長時間の睡眠が必要な場合は、平日の睡眠時間が不足しているサインです。
もし「寝だめ」の習慣があるなら、平日に十分な睡眠時間を確保できるよう、睡眠習慣を見直す必要があります。
・寝床で過ごす時間(床上時間)が長いほど健康リスクとなるため、床上時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保する。
・食生活や運動等の生活習慣、寝室の睡眠環境等を見直して、睡眠休養感を高める。
・長い昼寝は夜間の良眠を妨げるため、日中の長時間の昼寝は避け、活動的に過ごす。
<⚠床上時間を意識する>
床上時間とは、睡眠時間に加え寝床に入って寝付くまでの時間を含めた時間のことを指します。高齢になると、自宅で過ごす時間が増えるとともに、育児などの家庭内での役割も徐々に減少するため、寝床で過ごす時間や昼寝が増える傾向にあります。
近年の研究では、長時間(9時間以上)の睡眠はアルツハイマー病の発症リスクを増加させるなど、高齢世代においては、むしろ長時間睡眠による健康リスクの方がより強く表れることが報告されています。
様々な健康上の問題から、寝床で過ごす時間を減らすことが難しい人もいますが、必要な睡眠時間を確保しつつ、昼夜のメリハリを増進するために日中の活動時間を増やし、必要以上に寝床で過ごさないようにすることが、健康を保持・増進するために重要です。
・小学生は9〜12時間、中学・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保する。
・朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避ける。
<子どもの心身の健康を保つために必要な睡眠>
子どもの睡眠不足が続くと、肥満や生活習慣病、うつ病などの発症率を高めたり症状を増悪させたりする危険性があります。
子どもの睡眠不足の原因として「寝る時間と起きる時間が一定ではない」「夜遅くまでスマホ・ゲームをしている」「ストレス(学校、受験、家庭内など)」などが挙げられます。
まずは「早起き・早寝」という基本的な生活習慣から見直し、適切に対処していきましょう。
また、子どもでも睡眠時無呼吸症候群や不眠症、ナルコレプシー、むずむず脚症候群など、生活習慣や睡眠環境が原因によるものではない睡眠障害が見られることがあります。
生活習慣や睡眠環境を改善しても睡眠障害による症状が見られるときには、一度かかりつけ医を受診しましょう。
良質な睡眠のための環境づくり
よりよい睡眠をとるために光・音・温度それぞれに着目して、睡眠環境を整えてみましょう。
⚫体内時計を調節するため、日中にできるだけ日光を浴びる
⚫寝室にスマートフォンやタブレット端末を持ち込まず、できるだけ暗くして寝る
⚫寝室は暑すぎず寒すぎない温度で、就寝の約1~2時間前に入浴し身体を温めてから寝床に入る
⚫できるだけ静かな環境で、リラックスできる寝衣・寝具で眠る
生活習慣と睡眠
睡眠の質の低下は生活習慣病のリスクを高め、日々の運動や生活習慣なども睡眠と深くつながっています。
心身の健康のために、質・時間ともに十分な睡眠をとりましょう。
⚫ 適度な運動習慣を身につける
⚫ しっかり朝食を摂り、寝る前の夜食を控える
⚫ 就寝前にリラックスする時間をつくり、眠気が訪れてから寝床に入る
⚫ 規則正しい生活習慣により、日中の活動と夜間の睡眠のメリハリをつける